2016年8月6日土曜日

シン・ゴ

ジラ。
見てきました。

東京に8年住んで地方に帰った人間の視点で見た率直な感想は、「僕ら地方民は映画の中で崩れたビルの一欠片ほどの価値もないし、民主主義に則って死ぬんだなあ」というものです。

ニッポンvsゴジラが今作のキャッチコピーでありましたが、このニッポンというのは作中で明言された範囲、関東圏のことを指し示します。
ので、まずそれ以外の場所に住むのはニッポンじゃない、切り離された視点で見ることになります。

なぜか。

それはゴジラの行動原理が不明だからです。
関東一円を適当に回遊して終わりです。

もともと(とはいっても昭和作品のゴジラに造詣が深いわけでないので極端な割り方になってしまいますが)ゴジラとは原爆・水爆に対するアンチテーゼ、核・放射能に対する怒り、憎しみ、恐怖といったものが顕現したような存在だったと思われます。

しかし今回作中で表現されたように、ゴジラは人の手には負えない神の使いであり、また人類の希望をもたらす福音であるとも評され最終的には共存の道を模索するとまでなります。
これは、モチーフが原爆→原発にシフトしたのかなという推測にはなってしまいますが、作中でゴジラがもたらした被害を鑑みるに、ほぼそうであるのは間違いないと思われます。

なので、以前からそこに存在するゴジラ(原発)に依存度の高い都市部(ニッポン)が、普段意識をしない日常の傍らにどれほどのリスクを抱えて生きているのかという描写に繋がります。

ここで現在地方民である自分は、「ああ、ニッポンから切り離されているから、ニッポン(首都圏)がどうなっても多分死にはしないし生活が送れてしまうんだなあ」という結論を抱きました。

ゴジラが限界集落の山村を荒らしに来ますか?
ゴジラがシャッターが軒並み閉まっている商店街をわざわざ踏み潰しに来ますか?

それはないでしょう。
地方民は、民主主義に則って自らが選んだ人間の政治によってより少数となり、消えていくのですから。

作中、主人公たちがこんなことを仰っていました。
「(政界は)敵か味方しかいない。わかりやすくていい」
「恐ろしいのはゴジラより人ね……」

そのとおり、シン・ゴジラが何に対して怒りや憎しみを持っているのか(そもそも感情というものがあるのか)はわからないまま、ただニッポンに生きる人々がどのようにして対応をするのか。
ある意味では、2010年代を表した時代劇だったのだと思います。

以上のことをひっくるめて、自分が劇場で見終わったあと抱いた感想は「首都圏の人は見て損はしないかなあ」、でした。
おそらく二回目を見ることもないかと思います。

ニッポンの外側の民。
シン・ゴジラは見る人見る立場によって存在する危機への警鐘、ただの特撮ショー、ちょっと極端な思考の啓蒙作品、どのようにも見えると思います。
自分が何をどう受け取るのか、それを掘り下げられる作品には間違いないかと。

2016年3月1日火曜日

シンフォギアLIVE2016

2日目に参加した備忘的なアレでつらつら。

今回シンフォギアのライブは初参加初武道館だったのだけど、仕事からの流れでそのまま来たのもあり結構実感薄いまま会場入りしてゴソゴソ。

前回のライブ映像を見てたのと、1日目の情報を一切入れられないままだったので、今回も歌と歌の間にMC以外のものを挟んでくるのかなとか思ってた。ある意味気を抜いてたというかまったりするだろうとかいう油断。

そうこうしてるうちにミカとガリィの場内アナウンス、注意事項が流れ始めてあまり切り替えのできてないままオープニングナンバー水樹奈々さんの登場。
割と動転したままである。

星天の演出に見とれつつ、まさか聞けるとは思ってなかった生フランメで圧倒される。
この辺でもう「日笠さんめっちゃかっけえー」ってなってる。

次の調・切歌ターンのときに一番印象に残ってるのはおきてがみのときのペンライトの綺麗さ。
緑一色の光景があんなに暖かく見えたのは初めてだったな。

井口さんはまさかシェンショウジン聞けるとは思ってなかったから聞き入ってた。
というか井口さんの表情とかに見入ってた。メモリアのときの暖かさと、シェンショウジンのときの無垢なる苛烈。

たやマさんはやらしい。
でもアガートラームは案の定カッコよすぎてホント日笠さんすげーってなってた。

re焼肉dayにテケテケしつつ、前回の映像でも思ったけど高垣さんのステージ全体、身体全身を使った表現にほわあああってなりつつクリスちゃんそっクリス。

颯爽と現れる先輩、BAYONET CHARGEは楽しみだった曲の一つだから嬉しかった 背中合わせの二人が完璧に頼れる先輩です。
空へ…はただただ水樹奈々さんの歌唱力にひれ伏すというか、この辺でようやくスイッチが切り替わって「翼さん……」って気分になった。
でもあのギャグはどうかと思う。

Glorious Breakの次に、個人的GXの主人公キャロルの番になったけども、自分の中ではキャロルか響の曲は最初のほうに一度入ってくるかなと思ってたので結構ここまで出番なしは以外だった。

実際は水瀬いのりさんのあの小さい身体からなにこの、なにって散々CD音源でボコボコにされてたのをはるかに上回るパワーで圧が違う圧が。
この時点ではBD6巻に収録された曲を聴けてなかったので、もしかしたらライブでやるかなーと思ってたけどそんなことはなかった。

次のイントロが流れた瞬間に視界がぼやけた。
自分にとっては、やっぱりこの人の、響の物語なのだ。悠木さんの歌うリトルミラクルを耳にしてようやく、自分のいまいる場所がシンフォギアなんだと心と身体で実感できた。
正直涙声でコールとかあんまりできてないけどまるで後悔はない。
悠木さんの、響の歌が聞けただけでもう十分すぎるほど感謝しかない。
そして限界突破からのガングニール。
「いまの」悠木さんが歌うガングニールは、とてもとても胸に響いた。

いつかの虹、花の想い出は、曲自体はノるとかそういうのじゃないけれど、響と未来がこんな歌を歌えるようになったんだ、ということそれ自体が嬉しい曲。
悠木さんと井口さんの表現もほわほわさせてもらった。

そしてクライマックスは、シンフォギアで最初に作られたと言われた曲、「始まりの歌(バベル)」。
装者6人で歌われる輝きはまさに天にも届くようだった。

終曲からの暗転、からのもちろんアンコール。
自分含め、観客の皆がアンコールを呼びかけるなか、GXの奥義のイントロがかかる。
自分は最初、ライブの開幕はこっちなんじゃないかと思ってた。
初手にて奥義で仕る。
その気概で初っ端にガンとやってくるんじゃないかなと。
けど違った。
理由はすぐにわかった。
暗転したままのステージ、プロジェクターにでかでかと文字が浮かび上がる。

「特報――戦姫絶唱シンフォギア」
あとからわかったことだけど、1日目でも同様の告知がなされたらしい。
ここまでは、同様の。
ざわめく観客の前に飛び込んできたのは、
「――TVシリーズ第四期+第五期製作決定」
期待、不安、困惑、歓喜、驚嘆、熱狂。
怒号にも似た会場の揺らぎに対して真っ向からぶつかって勝てる曲は、確かにRADIANT FORCE以外ありえない。

しかもこれは完全にS2CAでのRADIANT FORCE。
本来そういう曲ではないのに会場全体が合唱するとかいうトンデモな事態になってた。
あのときあの場所にいられたことは何物にも代えがたい経験だったし、今度もまた行こうと強く思った瞬間だった。

そこから「ありがとう」を唄いながらと、FIRST LOVE SONGとしての愛。
なぜそこで愛ッ!?
最後の挨拶のとき一発ではならなかったけど日笠さんのお人柄というか、ああマリアさんらしいってきっとあそこにいた皆が思ったことだろう。

フィナーレは虹色のフリューゲル。
これも、装者6名。
黄色に当てはまる装者はいない。

会場限定でのペンライト。
黄色はキャロルのカラー。

次を、期待してもいいんでしょうか。
自分を赦せたキャロルの歌を。

個人的には、これ以上響を戦わせるのはどうなんだという思いのほうがデカいので、ただ続報を待つしかないというのが正直な本音。
日常系にシフトしたりしませんか。

でも、エンディングで悠木さんたちが語ったように、またこの方々の演技が、表現が、歌が聞きたいという想いもあり、非常に複雑な感想を抱いた特報だった。

今回のライブで自分のことがよくわかったところに、自分が抱くシンフォギアのど真ん中には悠木さんと立花響がいて、その人たちがいてくれたからシンフォギアが好きなんだということ。
もちろん、翼さん水樹奈々さんやクリスちゃん高垣彩陽さん、他の装者や装者じゃない人全てが、その人でいてくれてよかった、という思いはあるものの、自分が考える以上に響のウェイトが重かったというのがひとつ。

その点も踏まえて、次のシリーズの動きから目を離せないし、これからもシンフォギアと付き合っていくことになりそうです。

楽しみなのは変わらないし、信じるのを諦めないということで。

2015年10月12日月曜日

シンフォギアGX

GXを見返して感じたことをつらつら。


まず、初見でGXの最終回を見たときに腑に落ちなかったことが解決した。
今作、響は普通の少女、人間なのだ。

無印では、シンフォギア世界の根幹・歴史に関わる問題に空手で立ち向かう英雄。
Gでは、世界の異変に裸のままで向き合うヒーロー。

そしてGXでは、泣いている少女(キャロルも、エルフナインも)を救うことができなかった、ただの人間だったのだ。
もしもキャロルと出会った瞬間に響がヒーローであったならば、「まずは力ずくで止めてみせる、話はそれからだ」と考えられる存在だったのなら、結末は変わっていたのかもしれない。

というわけでGXで英雄役を担ったのがキャロルであり、ヒーローはウェル博士だ。
これでひとつすっきりとした見かたができた。

で、きっとGXの命題でもある「赦し」は、世界に一人ぼっちにならない答えなんだろうなー、と。

響は、辛く苦しい過去、その最たる象徴でもある父親を「赦し」、悲しみすらも絆と変えて世界と繋がっている。

キャロルは、辛く苦しい過去を、想い出を焼却して力と変えた。
過去がなくなるわけでも、変えられるわけでもないのに、今に繋がる自分を消し飛ばしたのだ。
それはつまり、世界と繋がることもできなくなるということ。

だからGXはきっと、キャロルが自分を赦すための物語なんだろうと思う。
世界に一人ぼっちでなくなった瞬間に、キャロルはキャロルでなくなってしまうことが、自分は悲しかったんだな、とわかった。


エルフナインが見たキャロルの夢。
父親が「レシピ通りに」作った料理はママのようにはできてなかった、そしてキャロルが作る分にはきっと、美味しいものができる……と。
料理は「愛情」、ということなのかしらね。

クリスが学校の成績が良いのは、きっと学園生活全てが楽しいからなんじゃないかなあと思う。
Gで食事シーンがあったけど、テーブルマナー以前の問題だった。
なにかを教わる、なにかを学ぶという環境がなく、ただ生きるためだけに必死だった彼女だからこそ、日常で積み重なるものが愛おしいのだろう。

なんとなく未来さん見てたら、「無理しないで」的なことを響に言わなくなった?
前から言ってたかどうだったか。
響が響であることをやめられないと理解して、「帰ってくるのを信じてる」、という方向での発言が中心かな。


S2CAトライバーストで捻じ伏せることはできないキャロルの歌。
S2CAヘキサコンバージョンで、受け止めることができたキャロルの歌。

一人じゃないと示せたはずなんだけどなあ。
それでも、キャロルが自分を赦すことはまだできてない12話。

キャロルが見つけたひとりぼっちにならない答え。
もしも次があるなら、ひとりじゃないキャロルとエルフナインのデュエットでも聞かせてほしい。

2015年10月5日月曜日

キャロル・マールス・ディーンハイムと「tomorrow」20151006追記

悲劇。

戦姫絶唱シンフォギアGX13話を見終わった直後は、どうにも大団円とは思えずにすっきりせずにいた。
けれど、キャロルのキャラクターソングであるダウルダブラのカップリング、「tomorrow」を聞いて自分の中でGXは「悲劇」の物語として完結した。

歌詞もそうだが、まずこの曲で特筆すべきなのはそのタイトルと、水瀬いのりさんの表現力である。

タイトルである「tomorrow」。
日本語に直訳すれば、「明日」。

以下、自分なりにこの曲とGXに関しての解釈を連ねてみる。


まず、キャロル・マールス・ディーンハイムというキャラクターについてより深く考えてみる。
彼女は錬金術という「奇跡」によって「父親」と「夢」を殺された過去をもつ。
※世界を識るという命題を呪いに置き換えられたと言ってもいい。夢は呪いである。

「奇跡」、「親」、そして「夢」。
この三点に対してネガティブであるということが何を意味するのかは明白である。
それぞれが響、翼、クリスに該当する負の過去を、一切の救いなくずっと一人で抱えてきたということ。

装者たちが様々な仲間や反目する勢力と繋がってきた結果乗り越えられたものを、キャロルは孤独の中で深めていったのである。


まずここで、誰にも救いの手を差し伸べてもらえなかったことがひとつめの悲劇。


「tomorrow」では、歌い始めは非常に優しく語り掛けるようなウィスパーボイスで囁かれる。
恐らくは、まだ父であるイザークの温もりのもとでまどろむ幼いキャロルとしての語り口であると思われる。

そこから『もしもあの炎の日がなければ……?』と続き、『パパを壊さなくてもいいのかな……?』、と区切られる。
このパートは迷いや揺らぎを感じさせながらも、既に優しく囁くような声音ではない。

ここから曲調は盛り上がり、増していく音に対して荒涼、寂寞としたイメージを想起させる音色になる。


キャロルも、最初から迷いや苦しみを一切感じなかったわけではないということが伺える。
しかし、誰からも助けてもらえなかった。
一人で、もがくしかなかった。
その結果が復讐と突き立てた牙であり、暴虐に涙はいらないとなる。


キャロルのやり方は確かに間違っていただろう。
しかし、父から託された「夢」を、果たそうと願うことそれ自体は、否定をされなければならないものなのだろうか?
夢を叶えようとすることそれそのものは悪ではないと、装者たちや、ウェル博士も体現をしていたのに。

ここで、誰にも肯定をされなかったことがふたつめの悲劇。


『救いを求め願った自分が 醜く汚くて 血で血を洗い狂えと』
迷いを殺し、張り詰めた声で歌われる詩が、キャロルの状態にリンクして、崩れていく。

『ルルリラ……ルルRゥるRiラ…』
『パパは? Neえ? パPa ハ?』

歌詞にあるように、まさしく言葉が果てていく中で、キャロルの声だけがどこまでも透明に澄んでいく。
キャロルもまた、「そうするしかなかった」なかで、錬金術という力を行使できる強さがあってしまったがために間違えてしまっただけで、本当にほしかったものは、リトルミラクルで歌われたような、「普通の明日」だったのだ。

『「わたし」ヲ褒メテクレルカナ――――』

もはや飾ることもない、ただの「わたし」。
全てをなくしたキャロルが最後にエルフナインのもとを訪れて、彼女を救うために自らの身を差し出した。

誰かを救うために躊躇しない、キャロルの本質が明確に現れていたシーンである。

「俺たちは対価なしに明日を繋ぎ止められないのか……ッ!!」
GX12話で弦十郎はこう呻いた。

エルフナインの「明日」を繋ぎとめたのは、無垢なるキャロルの意志と、父から託された錬金術という「軌跡」である。

『らLaラ…ラRぁらら…』

詩にすらなっていない、少女のような、女性のような声だけがメロディーと共に消えいる。
キャロルが繋いだ確かな「明日」に、キャロルだけが存在しない。


これが対価というのなら、悲劇といわざるしてなんと言おうか。
フィーネやウェル博士も、最終的には何らかの形で救済をされて物語から退場した。

キャロルだけは、ついぞ誰にも救われることなく、キャロルとして進んできたことを誰にも肯定されることなく、幕を引いた。


キャロルこそ生きて、救われてほしかった。


そして、もしもあのキャロルの終わりを救いだと評されるならば、響と未来の関係にも同じ終わりで救いと言えるのかを問いたい。

キャロルとエルフナイン。
響と未来。
どちらも、お互いが罪の意識を分かち合った、かけがえのない存在であることには変わりない。

次が匂わされるエンディングだっただけに、この悲劇も乗り越えて、本当の大団円で決着を見ることは叶うのだろうか。

シンフォギアライブ2016で発表されたら、嬉しいような、怖いような。



20151006追記


BDが届いてRADIANT FORCEが聞けるようになったので早速聞いてみたところ、また自分のなかでふつふつと。

RADIANT FORCEで歌われたのはまさしく、響、翼、クリスが紡いできた過去を束ねた軌跡。
明日に繋がる愛と夢を歌う曲だ。

この歌を聞いたときに率直に感じたことは、キャロルからすれば最初から勝ち目のない戦いだったのだということだった。
こと、歌において響たちは相対した歌がどんな歌であれ、絆にし、力へと変えてみせる。
明日に繋がる今日に生きることが、一人じゃないことを知っている。


それに対して殲琴・ダウルダブラ。
たった一人で歌う曲だ。
『愛など見えない』、と。

それもそうだろう。
先にキャロルを裏切ったのは奇跡、世界の愛のほうなのだから。
だから、私も奇跡を殺して何が悪いのだと、想い出を燃やし歌う。

しかし、「tomorrow」にあったように、キャロルも本当は想い出を燃やしたくない。
大切なパパとの記憶を、壊したくはないのだ。
それでも彼女には錬金術しかない。
シンフォギアのように、純粋に歌を力とは変えられないのだ。
だから、想い出も自分自身も何もかも、なくなってしまえばいいと。
虚無こそが安寧の楽園だと思い込ませて愛を歌うのだ。

そんなキャロルに対して、RADIANT FORCEを歌う装者がどれだけ重苦な憎しみを感じさせるものだったかは、慮ることすらできない。


また、「tomorrow」に対してリトルミラクルがどうであったかも重要で、
『言葉がなくたって 言葉じゃなくたって』
『やり直せばいい 壊れたって もうへいきへっちゃら』
『私はまた立つ…! 明日へと』
と歌われている。

「tomorrow」は、
『言葉が果てる 記憶がバラバラと 音を立てて崩れ逝く』
『せめて歌なら メロディーにして願ったなら パパを壊さなくてもいいのかな……』
『魂も何もかも 炭にして舞い飛べばきっと また逢える』
と、ことごとくが対照的に歌われているのはどうしてなのか。

それは、根本的なところでキャロルと響が極めて似た部分を抱えているからである。
一期の響を思い出してもらいたい。

常軌を逸した「人助け」は、翼に前向きな自殺衝動かもしれないと釘を刺された。
あのときの響も、夢などではなく自ら抱え込んだトラウマから逃げるように、「ここにいてもいいのだ」と自分に言い聞かせるために人を助けていた節がある。

キャロルもまた然り。
世界を解き明かすという命題は、この世界に留まる理由そのものであり、そのためならば自らの身体はもとより大切な想い出もただの消耗品にしてしまえる。

二人にとっての「人助け」「世界を識る」とは、生きているだけで感じる痛みを消すための麻薬なのだ。

ただ違ったのは、響には奏からもらった言葉があり、未来がいた。
キャロルは、世界に一人ぼっちだった。

このことからキャロルの結末は、「悲劇の英雄」となってしまうのだ。

目の前に苦しんでいる人がいる、助けられる力がある。
だから、助ける。自分の身がどうなろうとも。

消えて尽きてしまったキャロルは、一期の最後にてもしも響がひとりぼっちだったのなら、という解答なのだ。
流れ星は、墜ちて燃えて尽きて。帰ってこなかっただろう。

しかし痛烈に皮肉なのは、それがまさしく英雄なのだというところ。
響では、どうあっても、エルフナインを救うことはできなかったのだから。
歌で救えない明日を、彼女自身の軌跡で救ったキャロル。

もし彼女をひとりぼっちにしないであげられる人がいたのなら……と考えてしまうぐらいには悲しくて仕方がない。


再追記。

「お前も人助けして殺されるクチなのか!」
「オレが奇跡を殺すと言っているッ!」

序盤でキャロルが口にしたこの台詞、結末を知ってから聞くとなお重い。

まごうことなく奇跡を殺してみせた(歌ではなく錬金術で救ってみせた)けど、結局この子自身が、人助けをして死んでいくクチの……という。
生きて赦されてほしかったなあ。

2015年8月29日土曜日

戦姫絶唱シンフォギアGX第7話

◆戦姫絶唱シンフォギアGX



・第七話「輝きを継ぐ、君らしく」



開幕はマリアさんの偽りシーン集から。
強くなりたい、そうありたいともがいてきたという。
眠れる胎児のようなイメージイラストから、目覚めたマリアがみた光景は……


海。


「求める強さを手に入れるために、ここに来た!」

と言いながら、海!
水着回をはさんでくるシンフォギア。
どうしたシンフォギア、第二部開始か。

ここからほのぼの日常モノに……はならんわなあ。


イガリマ、シュルシャガマにも修復後、イグナイトモジュールを組み込んだ。
それはもちろん、セレナのアガートラームにも。

セレナの、というとまたマリアさんは悩むのかもしれないけれど。
自分の力とは……

装者が増えたこととシンフォギアの新たな力を得たことで
「ここらでひとつ特訓だな!!」
と弦十郎さんが盛り上がる。
そして露骨に嫌そうな顔をするクリス。

前回が前回だからなあ。
で、冒頭にあった海のシーンに繋がると。

しかしクリスちゃん浮き輪に乗ってバカンス気分だこれ。

特訓場所はつくばにある研究機関。
そこでは、ナスターシャ教授がフロンティアに残したデータを解析、解明している施設があった。

緒川さんらと研究員が話している分には、フォトスフィア、と呼ばれる光の球体を中心に現在分析を進めているとのこと。
フォトスフィア……あえてサイズの言及もあったことからして、仮想空間、仮想現実のように何らかの形で擬似的に世界を作り出すことができるのだろうか。
世界をバラバラにした、その先に。


一方その頃装者たちはビーチバレーをしていた。

響としては肩の力を抜くためのレクリエーションのつもりだったのだけど、まあ翼さんが勝負事に熱くならないわけがないよね!!

知識として、どういうことをすれば正しいビーチバレーなのかを既にインストールしているエルフナインが華麗にジャンプサーブ、できない。

実際にやってみるという体験、実感が伴わないと、上手くいかないものですねー、と。
マリアさんは「弱く打っても大丈夫。大事なのは、自分らしく打つことだから」、と優しく微笑む。
優しいマリアさん。
響をはじめとする装者全員は本当にこう、自分以外を救うことにかけては的確に正鵠を射抜いていくんだけどなあ……

休憩中に倒れこむクリスちゃん、そのポーズは全国の男子が死ぬ。

お昼の買出しをかけてコンビニじゃんけん。
翼さんカッコいいチョキ、いわゆる田舎チョキを出してるんですけどどこで得た知識なんだ。
ラジオでも言ってたけど確かに自分で考案しそうなのがまた面白い。

不器用だけど真剣、実直な直刃ですなあ。
斬撃武器の装者(調、切歌、翼)が軒並み負けで、買出しに行くことに。

買出しに行くなら、「ほしいものだけ買うんじゃなくて塩分とミネラルを補給できるものもちゃんと買うこと」、とか、「人気者なんだから、これ(サングラス)かけていきなさい」とか、マリアさん完全におかんポジション。
翼さんにも「母親のような顔になってるぞ」と言われる始末。

しかし、翼さんにとって母親とはどういう存在だったのか。
優しげに微笑むマリアに一瞬その面影を見たのかどうなのか。
聖母。


まあ結局好きなものばっかり買う常識人もいるんですけど。
本人曰く、「役得と言うのデース」。
そんな二人を見て微笑む翼もまた母親のような顔になってる気がする。


場面変わって、近くの神社がボロボロになっている。下から見えているのかどうなのかは判別できないが、本殿にはぶっ刺さった氷塊。
「台風かなあ」とぼやく現地の人々だけど。
どう見てもガリィです本当にありがとうございました!


イグナイトモジュールにて強制的に暴走状態に陥らせる機能は、三段階のセーフティにて制御される危険なものであるとエルフナイン。
自我を保つ特訓をしなければ、とエルフナインは訴える。
エルフナイン、どういう駒として扱われるかは謎だけど、少なくともエルフナインの自我としてシンフォギアをどうこう、という線は薄いか。

しかし、状況を忘れているわけではないだろうに「真面目だなあ~」とヘラっとした響は、少しキャロルを引きずっているのだろうか。


と、ここでガリィさんが水柱からババーンしてくる。
「夏の思い出作りは十分かしら?」
「んなわけねぇだろッ!」
真っ向から真っ先に反発するのは、イチイバル。
水着版の変身バンクを引っさげての割り込みです。


虚像を上手く使って響とクリスを吹っ飛ばすガリィ。
パワーよりも試合巧者という点が強みっぽいが。

マリアにエルフナインと未来を連れて逃げるよう指示する響。

「キャロルちゃんからの命令もなしに動いてるの!?」
「さあね~♪」
これは命令ですね間違いない。
まあ錬金術師側的には現在進行形で想定内の状況なのだろう。


戦闘の様子を感じ取った翼らが一般人に安全な場所へと逃げるよう伝えるが、唯一そこにいた大人は子供たちを連れて行かずに逃げ出した。
しかし、その大人が着ていた服には「REIDEE」の文字。
REIDEEN。
勇者ライディーン。
主人公の名は、『ひびき洸』。
「ゴッド・ラ・ムー」の掛け声と共に放たれる「ゴッド・ボイス」は、主人公の生命エネルギーを極限まで消耗させて相手の身体を共振させる超音波砲。
共振、共鳴。
捨て身の絶唱。

意味がない、わけがない。


アルカノイズと戦闘中の響が不意に気がつく。
ガリィの姿がない。
(……まさか、マリアさんのほうに!?)

ガリィは因縁つけてたからなあ。

「見つけたよ、ハズレ装者」
突っかかっていくガリィを迎え撃ったのは、左手の拳。

アガートラームを握り締める、銀の左腕。

ただしまだ変身バンクはない。
アガートラームのアームドギアは小剣らしい。
ただ、その姿と数は千変万化。OPにもあったような蛇腹にすることもできれば千の桜と化して乱れ飛ぶこともできる。

それでも、慣らしもなしのぶっつけ本番ではまだ届かない。
素のままでは。

イグナイトモジュールを抜剣したマリア。
「弱い自分を、殺すッ……!」
自分を殺して得た強さが、本物なのか。答えを見つけられていないマリアは、かつての響と同じ、純粋な暴走状態へと陥る。
そう考えると、翼とクリスが暴走には至らなかったことが、どれだけお互いの想いで繋ぎとめられたかが窺い知れる。

「うっわ、獣と堕ちやがった」
唾棄するように嘲笑しながら、ただ力を振るうだけのマリアを叩きのめすガリィ。
直線的なことしかしてこない相手には無類だろうしなこの子。
「歌ってみせろよ、アイドル大統領!」
抉る抉る。

「やけっぱちで強くなれるなんてのぼせ上がるな。ハズレ装者にはがっかりだ」
ハァ、とため息をついてガリィは撤退。
この一言は完全にマリアを刺しにきてるんだよなあ。
やけっぱちでない、本当の強さを見つけてみせろってことに繋がるわけだし。
しかし、がっかりだ、というからには多少の期待もしていたのだろうか。

「私は……何に負けたのだ……?」
倒れる自身を心配するクリスやエルフナインを他所に、うわごとのように呟く。
青空はなにも答えてくれない。


ここにきて、オートスコアラー、引いては錬金術師側の目的を完全に把握できていないことを話し合うシンフォギアメンバー。
しかし「いちいち盆が暗すぎる」、という表現は誰の仕込だクリスちゃん。SAKIMORIか。

外で一人、悩み暮れるマリアさん。強くなりたいと。
そんな足元にバレーボール。
空いた時間にビーチバレーの練習をしていたエルフナインちゃん。
ふっと、練習に付き合おうと言うマリアさんはただの優しいマリアさん。
結局は、ナスターシャ教授が一番よく見てた。
強さ、という偽りを背負わせてしまっていたことを後悔していた。
マリアは強くない。
優しいのだ。
だから烈槍でなく、appleで世界を救ったのだ。

そういえばエルフナイン、ホムンクルスとして製造、稼動してから一体どれくらいの時間が経過しているのだろう。
実稼働時間が年にも満たない、ということもありえなくはない。
だから例えばこのビーチバレーの練習も、彼女にとってはかけがえのない想い出になっている……?


「強いって、どういうことなのかな……」
計り知れない知識を有するエルフナインに、ポツリと問いかけてしまうマリアさん。
「それは、マリアさんが教えてくれたじゃないですか」
はっとしたように何かに気付きかけたマリアの目の前に、ガリィ再び。

今度こそ、アガートラームの変身バンクだ。
掲げる左腕は強さでもあり、それは優しさなのだろう。

二人の戦いを横に、ファラさんが暗躍する。

風と化して視覚では捉えきれないファラの気配を感じ取ったのは緒川さんだけ。
その緒川さんをもってしても疑念を確信に至らせないとは、ファラさん恐ろしい地味さ。

ファラの狙いは研究施設内にある何らかのデータのようだ。
アルカイノイズの反応に対して出撃していった装者たちが施設にいないうちに、内側へと忍び込む。
ニンジャァ……


自分らしくあること。
エルフナインは非力で貧弱で、それでもできることがあるとしてシンフォギア装者の力になってくれた。
自分にできること。
それはすぐに変わるものではない。
強くありたいと願うのは、自分が弱いと思っているから。
弱い自分を切り捨てても、それは強くなったのではなく、単に目を逸らしているだけ。
だから、弱いままの自分を肯定してあげられて初めて、強くなれる。

今度こそ抜剣したマリアのイグナイトモジュール。
「私は弱いまま、この呪いに反逆してみせる!」

エルフナインの勇気に応える歌だ、と示したけど、やっぱりこの人もどこまでいってもお人よし。
誰かのために歌いたい。
それがきっと自分らしくあるということなのだろう。

新技SERE†NADEでガリィを撃破したマリア。
まあアガートラームも黒いの似合わないから反転は確定してるのだけどウズウズする。

しかし、ガリィが拘っていた「一番乗り」、という言葉の真意とは……?
チフォージュ・シャトーの青い垂れ幕にも、ガリィの使っていたような錬金術の文様が輝き、浮かび上がっている。
オートスコアラーも、撃破されることに意味がある……?


海に来たら夜は花火ですよね!
これ、言い出したの響だろ絶対。

「うん、充実した特訓であったな」
「それ、本気で言ってるんすか」

短いながらも翼とクリスのこの掛け合い。これだけで胸を打つ。
二人の関係が、どれだけ「普通」なものになっているかが垣間見えて。

「充実も充実~! だからお腹がすいてきたと思いません?」
響の言葉を発端に、再び行われるコンビニじゃんけん。

今度はパーを出した響の一人負けである。
「『パー』とは実にお前らしいなあ」とニヤニヤするクリスちゃん。
「拳の可能性を疑ったばっかりに……」と涙ぐむ響。

けど、パーが響らしいというのは、包むものの象形、誰とでも繋がれると信じる響が拳でないものも持っているということに他ならない。
広げた手のひらに大切なものを包み握り締めて、拳を作っているのだ。

まあ一人負けといっても未来さんが付いていくんですけどね!!!!!


買出しに行ったコンビニ前の自販機ではしゃぐ響、入り口に立っていた未来に店内から声がかかる。
ネームプレートには、「守崎 洸」の文字。
REIDEE。

なぜ声をかけてしまったのか。

響と洸。
娘と父。

世界を救った勇者に対し、勇者の名前を持つ父親は何を刻むのか。



2015年8月20日木曜日

戦姫絶唱シンフォギアGX6話

◆戦姫絶唱シンフォギアGX



・第六話「抜剣」


開幕はキャロルの回想シーンから。
パパことイザークさんと二人で流行病を治す薬を作るために、それの原料となるものを採取しに来ているようだ。
場所はマッターホルンぽい雰囲気。

「世界の全てが知りたいんだ……人と人がわかりあうためには、とても大切なことなんだよ」

皮肉にも、この言葉を発したイザークは他者から理解されることなく処刑された……というのがバックグラウンドにあるようだけど。
とすると、キャロルにとって「世界の全てを知る」ということはどういう目的で行われるのか。
世界をバラバラにする万象黙示録の完成。


新型シンフォギアに身を包んだ先輩コンビがミカに反撃開始。
そして唐突なマリアさんの「男どもは見るな!」という釘刺し。
いやまあ切歌と調は裸体だけどもさ。だけどもさ。

あとつい勢いで目をふさがれる響。未来さん強いぜ……。


アルカノイズを慣らし運転で片付ける。
曲はもちろん、BAYONET CHARGE。銃剣突撃である。

この曲のタイトルがかなり好き。
銃剣、突撃銃の先端に専用のアタッチメントを取り付けて近接戦闘に対応させるものだけれど、この二人にしての意味合いはまさしく、銃と剣が一体となって戦う、ということだろう。
カッコいいよねえ。

翼さんが「挨拶など無用」と入るのも、「挨拶無用のガトリング」からきてるんだろうし、本当にいままで積み重ねてきたもの積み上げてきたものが曲となって歌となって表現されるシンフォギアは素敵だ。
もちろん逆のクリスも歌いだしの歌詞に「ひとつめ、ふたつめ」と入ってることからしてもうね。
Bメロがすごいすきなんだよなあ。


強化型シンフォギアにはアルカノイズの分解に対するバリアフィールドの調整も入っているようで、攻撃を受けることも問題なく行えている。
こうなれば普段どおりの戦闘で対応できるノイズは数と規模の問題になってくるか。
昔のノイズさんと違って人だけを殺す兵器じゃないからなあ。


ここは二人に任せるです、と切歌と調は戦闘領域から撤退。
調は「私たちが足手まといだから……!」と悔やんでいるようだけど、適合係数の低さと合わせてストーリーに後々かかってくるかな?


戦闘のクライマックスはもはや恒例のノンチャージMEGA DETH FUGA。
金子さんがツイッターでも仰ってたようにクリスと翼の戦闘レベルはかなり群を抜いて高い。

「はン、ちょせえ」
とミカを吹き飛ばしたところでキャロルの登場。

ラスボスとの対決……か?


まさかのキャロル変身シーンである。
アウフヴァッヘン波形に非常によく似たパターン。
竪琴をモチーフにした聖遺物の起動である。

「これくらいあれば不足はなかろう」
胸を強調しながら言うのはやめて差し上げろ。
しかしまさしく北欧美人だなキャロル。

聖遺物の力はまさに強力無比なものであるけれど、歌うことでフォニックゲインを高めて起動したネフシュタンやガングニールで共鳴させたデュランダルとは違い、まったく歌わずに聖遺物を動かしている。
そのエネルギー源とは、思い出。

思い出という脳内の電気信号を変換、焼却したもの。
この焼却は償却にもかかってるいのだろうか。

目覚めて日の浅いオートスコアラーは思い出というエネルギーを他者から奪わなければいけなかったが、数百年を生きながらえたキャロルは己の思い出だけで強大な力を発揮できるということ。

エルフナインに記憶の転送複写した思惑が見え隠れ。


とりあえずラスボスにボコされる先輩コンビだけれど、イグナイトモジュールの真価はここから、らしい。
「付き合ってもらえるか」
「無論、一人でいかせるものか」

不穏なワードを出しながらイグナイトモジュールを「抜剣」
ダインスレイヴという起動音と共に、二人の身体を貫く。


語られるシンフォギアの決戦機能。
ひとつは絶唱、もうひとつはエクスドライブモード。
その二つには致命的な欠点があり、絶唱は装者の相打ち前提気味であり、負担を考えればそう連発できるものでないということ。
そしてエクスドライブモードは言わずもがな、奇跡のようなものなのでいつもフォニックゲインをそんな簡単に発動させられる状態に持っていけないということ。

しかしイグナイトモジュール。
シンフォギアの暴走はかつて片腕を失った響にアームドギアとして腕を再生させたばかりか、ネフィリムを圧倒した力やアースガルズをぶち抜いた(あれはフィーネが手を抜いた可能性もあるけど)記録もある。

暴走をコントロールして純粋に戦闘力へと変えることができれば。
やっぱりダインスレイヴは魔剣ですよね。

ダインスレイヴで負の感情を増幅させられている二人が見た景色は。


翼の場合。
なんの輝きもないステージで、ノイズを相手に歌い続けること。
「私の歌を聴いてくれるのは、敵しかいないのか……?」

痛切だけど、端的に未来のなさを表してるエグさ。
そこに加え、「お前が娘であるものか。どこまでも穢れた風鳴の道具に過ぎん」という父親からの呪い。
それでも認められたい、という思いで自らを剣と化し、鍛え上げてきた。
しかしその力では、大切だった奏を守ることはできなかった。

『人の世が剣を受け入れることなどない』

フィーネがかつてのたまった台詞だけれど。
剣のままでは誰かと寄り添うことはできない。触れるものを皆傷つけてしまうから。


クリスが見た光景。

教室での日常。
ずっとほしかったもの、暖かい陽だまり。
モノクロームでなく、色づいた景色でもどこか違和感を覚えてしまう。
自分を慕ってくれた後輩もできた。それなのに自分のせいで周りが傷ついてしまう。

ひとりぼっちがこんな場所にいてはいけないんだ。
でなければ、自分のせいで周りの奴らが死んで、本当に独りぼっちになってしまう。

ここで、本当に死ぬ=二度と取り戻せないということを想像するあたりが翼とクリスの共通項なのかも。
もっと言えば響を含めた三人が、かつてあった陽だまりを喪失してる経験者なのよね。

ボロボロと泣きながら陽だまりから逃げていこうとしたクリスの腕を掴んだのは、同じく底なしの沼でもがいている翼だった。

基本原理というか、響と同じところを抱えている三人なのよね。
「私の歌は、誰かを傷つけるだけのものなのか……?」
という。

しかし、イグナイトモジュールの起動には失敗。
エルフナインはキャロルの錬金術には勝てないのか……と肩を落とすが、未来さんがまず最初に「大丈夫」発言。

可能性が全て尽きたわけじゃないから。
そういってエルフナインがもつもうひとつのギア、ガングニールを響へと向ける。
既に強化改修は終わっていたのか。

「ギアも可能性も、二度と壊させやしないから」

そう告げた響は凛としていたけれど、これは戦う覚悟をもったからなのか、それともまだ誰かを傷つけてでも守りたいものがあるからというところには踏み込んでいないのか?


ここにきてアルカノイズをばら撒くキャロル。
市街への被害はやはり昔のノイズさんと比べ物にならないかも。

「歌えないのなら、分解されるものどもの悲鳴をそこで聞け!」
これまた苛烈かつ的確な言い回し。
歌を聞かせる側のシンフォギア装者が守れないのなら、お前らが聴衆となって断末魔を聞き届けろと。


そこにミサイルに乗って響が登場。
一話のオマージュであるならば、三人が揃って歌う曲はひとつしかない。
RADIANT FORCEのイントロと共に、響は言う。

未来が教えてくれた、シンフォギアで救われたもの。
だから、シンフォギアを信じる。
自分を、胸の歌を信じる。
暗闇に飲み込まれそうでも、きっと一緒なら。

「――抜剣!」
と書いて、アクセスッ!! と読むよねもう。


イグナイトバージョンのRADIANT FORCEと三人の変身バンク。
勝ちです。

しかし変身した三人は黒い。
実に黒い。
これはもう一反転ありますね、イグナイトモジュール抜剣エクスドライブモードからの絶唱が今期のラストと予想。


この姿を見てマリアは「悪を貫く強さを……!」とアガートラームを握り締める。
アガートラームに黒は似合わないけど、どうなるんじゃろ。

イグナイトバージョンのRADIANT FORCEは超荒々しくなってます。
主にドラムの暴れ方。

アルカノイズ3000をたかだかと言ってしまうあたり、性能はエクスドライブ時のあれに匹敵するんだろうか。

未来さん、ヤバイ級の肝の据わり方してます。
完全に極道の妻です。
「私には何もできないけれど、全部抱きしめてみせる」

響が信じてくれていたから、未来さんは自分を真っ直ぐに信じられるようになった、ということだろうか。

ミカの時には不発だったボディへの一撃で動きを止めてからのスーパーイナヅマキック、もしくはジャコビニ流星アタック。

「勝ったの……?」
「ですです……デース!」

以前の響なら間違いなく動きを止めたところで攻撃をやめていたと思う。
しかし今回は躊躇なくそのシンフォギアの力でとどめを刺しにいった。

この変化がストーリーにどう影響するか。

「どうして、世界をバラバラに……」
「忘れたよ、思い出を焼却して戦う力に変えたときに」

ただ、こうして話し合おうとする姿勢は変わっていない。
この返事を聞くと、キャロルもまた響と似ているよね。
悩むポイントというか、こじらせ方が。
シンフォギアを信じられなくなって歌えなくなった響。
歌う理由、戦う理由。

「その呪われた旋律で誰かを救えるなどと思い上がるな」

キャロルはそう言い残して自害する。
呪われた旋律、というのはどこにかかっているのだろうか。
イグナイトモジュールのことか、それともシンフォギアにはまだなにかあるのか。


だが、キャロルの死によって歯車は噛み合い、チフォージュ・シャトーは動き出さんとしている。
オートスコアラーも準備万端といった体だし、キャロルの肉体的消滅は計算通りなのだろう。

ここでエルフナインがどう動くことになるのか、またシンフォギアの歌はどのようになってしまうのかがここからの展開の中心になるだろうか。
ようやくここでタイトルロゴにある響のイラストが回収されたわけだけど。はてさて。

イグナイト・モジュール。
ナイトブレイザー。
それは、全てを焼き尽くしてしまう暴力なのか……?

2015年8月9日日曜日

戦姫絶唱シンフォギアGX5話

◆戦姫絶唱シンフォギアGX




・第五話


冒頭は前回の続き、響のシンフォギアを破壊し撤退したオートスコアラーと救出に向かう緒川さん。
そしてプロジェクト・イグナイト。


救護室に運ばれていく響。
未来の呼びかけにも応えられず、意識は失ったまま。
物理的にも上げて落とされたし他の二人とは引きずるダメージも明らかに大きいのが見て取れる。

不安げな未来を翼とクリスは励ます。
同時に、乗り越えてきた響を信じると自分らに言い聞かせているようにも。

それほどまでに今回の敵は恐ろしい。


一週間が経過しても響の意識は戻らず。
破壊されたペンダントの後ろに響の胸の傷が映し出される。
毎回この傷跡を見るたびにブギーポップのフォルテッシモを想起するんだよなあ。

ぼんやりとしたまま授業中であることを忘れてピアノの演奏を止めてしまう未来であった。


一週間の間にプロジェクト・イグナイトは89%まで進んでた。
早い!
エルフナインちゃんしか携われないだろう技術であるのに一人でかー。
そこはかとなくブラック。


移動型本部のメンテナンスも合わせて行ってるらしい。
調整やらなんやらでてんやわんや……のはずだけどそこをなんとかしたのが八紘兄貴。
風鳴八紘さんらしい。

内閣情報官であり、弦十郎さんのお兄さん。
それはつまり、翼のお父さんということ。

ここにきてようやく触れられた翼の肉親、家族関係の話だ。
思えばあの幼いときからシンフォギアの起動実験に関わっていたのだから、元々防人の系譜ということを差し引いても一筋縄ではいかない家庭なのだろうと。

現に父親のことを話す翼の表情はあまり浮いたものではない。
しかしクリスや響からすれば、「生きてそこにいるのだから、対話できるだけマシ」という風にも見えるわな。

どうもマリアがS.O.N.G.にすんなり転属できたのも、この八紘さんの力添えあってのことらしい。


と、そこに響の様子を見てきた未来さん。
緒川さんいわく、大きな外傷もないし生命維持装置が機能しているから(肉体的には)心配ない、とのこと。
結構頭から血とか出てたけど大丈夫だったのか……。

そうは言っても表情は晴れない未来。


ここからキャロルの回想、エルフナインの夢。
夢。である。

暖かく優しそうな錬金術師の父親と寄り添って生きていたことが伺える一幕。
母親がどうなっていたのかは不明。
もしかするとキャロル自身ですらホムンクルスの可能性もある。

「生きて、もっと世界を知るんだ。それがキャロルの――」
そう最期に言い残して炎に包まれていった父親。
夢は呪いである。

キャロルはエルフナインに自分の記憶も転送複写しているらしい。
ますますもってきな臭い。
神の器。


シンフォアギアの回収作業が終わる前に、アルカノイズ襲来。
敵の狙いは発電所。
本部へのエネルギー供給を絶つことが目的?

衝撃と轟音に飛び出してきた調と切歌が、状況を察知。
潜入美人捜査官メガネをつけて駆け出していく調は「時間稼ぎ」をすると言う。

これには切歌も「なんですと!?」。
無策のままでは何もできないとブレーキをかける。
これは確かに常識人だ。

二人がやってきた先はメディカルルーム。
そこにある策とは……!


アルカノイズの位相差空間干渉力というか、実体化に関する部分は結構緩いらしい。
なんと通常兵器での損壊を確認。やったぜ。
でも次の瞬間にやられる。悲しいね。


そして戦場に立つ調と切歌。
変身バンクと歌は調。
両手にヨーヨーを構えて勇ましさアップだ。
スケバンというか、メダロットにいたなあこんなデザインと思ってしまった。

この二人のユニゾンは状況対応力が非常に高い。
機動力と範囲殲滅力に優れているので、互いがカバーリングしやすく敵からは崩しにくいだろうなあ。
それをだいたい一人でやってしまうクリスも大概におかしいスペックだ。

新技、艶式アクセルも披露しノイズを片付けていく二人。
いまのところ多少苦しそうではあるが、シンフォギアのバックファイアをある程度抑えられている様子。
そんな二人を高みの見物、お先真っ暗と評すのはミカ。

またしても最強。
気楽に立ちはだかってくれるものだ。


意識を失っている響もまた、夢を見ていた。
奇しくもキャロルと同じく、それは父を失う夢だ。

目覚めた響は自分のことを「大切なものを壊してばかり」と。
それでも未来の気持ちに応えなければ……と身体を起こして気がつく。
胸の歌のありかはいずこ。

寄る辺なき力というか、やはりあれだけ様々なものを守ってきていてもまだ「壊した」という自罰的思考のほうが強いのか。
呪いであるな。
未来さん頑張れ超頑張れ。


シュルシャガナとイガリマのバックファイアが抑えられている理由は、メディカルルームから持ち出したLiNKER。
モデル・K。
かつて奏が用いていたLiNKERだった。

無茶は承知。
それでも守りたいものがあるのだから。

いよいよ始まる――いよいよ終わる。
万象は黙示録へと記される、とキャロルは言い放つけれど、世界をバラバラにするというのはやはり再構築への布石なのだろうか。


そして調と切歌に襲い掛かるミカ。
飛び出そうとするクリスを止める翼。
昔なら翼がいの一番に飛び出していきそうなものだった、というか飛び出したいのは同じ気持ちだ。
守れない悔しさを誰より感じているのは他の誰でもない、翼なのだ。
言葉を返すことのできないクリス。そんな二人の目の前にヘイお待ちどうしにきたエルフナイン。
「お願いがある」と言っていたが、プロジェクト・イグナイト。すんなり行かないのはわかっている。


ミカに押される調と切歌は更なるLiNKERの投与による適合係数の上昇を図る。
止めようとする弦十郎さんと、そのままやらせてあげてほしいというマリア。
せめて歩ませよ我が贖いの道を。

しかしマリアは戦えない自分を痛烈に歯がゆく。
マリアもまたいまは二人を信じることしかできない。

調と切歌は互いにLiNKERを打ち込み、オーバードースを受け入れながらユニゾンを歌う。
そかしそれでも、ミカには届かない。

そこで実は切歌のほうがフォニックゲインが高いことが明かされる。
というか、それを観測できる何かを持っているのか?


発電システムがダウンして内部電源に切り替わったところでコントロールルームに響現る。
「また歌えるようになったのは、未来のおかげだよ」
という笑顔がどこか違ってみえるが……。

大丈夫、へっちゃら。なわけはないのだ。


遊びは終わり。
打ち砕かれる切歌のギア。
仲良死こよ死。
調に価値を見出さないキャロルは好きに始末しろと。

ミカはアルカノイズを大量に呼び出して消耗戦。
もちろんそんなものを捌き続けられるほど調に余力が残されているわけもなく。
時限式に乗っかるものは重い。

ギアを砕かれた調を、完全に始末するつもりでアルカノイズが襲い掛かる。
いままでの装者に対してはギアを砕いた後撤退をしていたオートスコアラーが調にだけとどめをさそうとしたことから、まだ他の装者に対しては何らかの狙いがあると見てほぼ間違いはないだろう。
プロジェクト・イグナイト。果たして。

誰か調を助けてと叫んだ切歌に応えたのは。
剣と銃。

ハードロックな和調のイントロ、翼とクリスのユニゾンを引っさげて再び戦場に立つ先輩コンビ。
ここからが戦いの本番だ。